銀座の夜は静かがいい
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先日、政財界のフィクサーT先生と会食した。
T先生は検察と警視庁のドン、75歳。
いまや安倍内閣の閣僚から広域暴力団に至るまで、T先生に逆らう者はまずいない。
「どうやってツッぱるか」で書いたが、先々月も怒り狂った大物ヤクザを手紙だけで黙らせた。
食事のあと二人で銀座のT先生の行きつけの店に寄った。
余談を聞きたい。
店の玄関でママとチーママがT先生を出迎え、
9時を回っていたが客はわれわれだけで、とても静かだ。
ママたちの尊敬の眼差しがしとやかで、やわらかい会話が心地いい。
T先生との低音の会話も心地いいが、
ホステスたちの衣擦れの音や、グラスにワインが注がれる音まで聞こえてきそうな雰囲気がいいのだ。
しばし歓談。
・・・唐突だが、思わずキリスト教神学校の講義の後の星降るような夜空を思い出した。
銀座のクラブとキリスト教神学校ではギャップが大きいが、意外にもこの静かな雰囲気が似ているのに気づいた。
6年前、
おれが師事したK会長が79歳で亡くなった。
K会長は一代で50社に及ぶ企業グループを作り上げ、田中角栄さんから森喜朗さんまでの歴代総理のフィクサーとして知られていた。小泉さん以降は気が合わないということで政界から距離を置いた。
K会長は身長185㎝でスマート、高級スーツが似合ってカッコよかった。亡くなるちょっと前までおれと二人で銀座や湯島に飲みに行った。
会長はおれの実の親父と同じ歳で、おれを片腕として育てようとしてくれた。いまおれが代表を務めている投資会社も会長と共同で設立したものだ。
K会長が亡くなったあと、
おれは一念発起して、とくに聖書についておれの解釈にずれがないか確認するために、都内のキリスト教神学校の夜間部に通った。
その神学校の理事長がまたまたおれの実の親父と同じ歳で、気が合って、いろんな話をした。とても尊敬できる男だ。
おれは仕事が終わるとすぐに神学校に飛んで行って、夜10時近くに講義が終わってから銀座のクラブに直行して接待に加わるなんてことも多々あった。
そしてある夜、疲れた身体の帰り道、見上げた夜空が、星が降るように輝いてすごくきれいだったのだ。
閑話休題。
さて、銀座の店、いい雰囲気でT先生が立ってマイクを持った。
T先生は高倉健ばりの二枚目。75歳だが、剣道と合気道で鍛え抜かれたスマートな身体を高級スーツで包み、シルエットがとてもいい。
曲名は分からなかったが、ゆったりした低音で、感情を抑え、ママもチーママもうっとりするほど包容力たっぷりに歌い上げた。
促されておれもマイクを握ったが、最近歌ってないので、こうなると英語の歌でごまかすしかない。
T先生の世代のブレンダ・リー、I left my heart …… で歌唱力はごまかしたが、包容力あるムードは守った(^^)
それからT先生の所望でチーママがマイクを持つと、
「それではお耳汚しでございますが(^^)」と言いながら、
予期しなかった本格的なドイツ語のオペラ。
あとで聞くとチーママは芸大音楽学部出の声楽家なのだそうだ。
ここでT先生の友人で著名な順天堂大学の○○教授がやってきた。
後ろにオリンピックの金メダリスト3~4人と日テレの若いアナウンサーたちを連れている。
若者たちに夕飯を食べさせて、そのあと飲みに連れてきたのだ。
○○教授に促されてみな礼儀正しくわれわれに挨拶していたが、
会話が始まるとやたら嬌声が飛び交って騒がしい。
というか、T先生の話が通じない(笑)
金メダリストの△△がマイクを握るともうキャバクラのノリの騒ぎとなった。
まあ、元気があってよろしい。
おれとT先生は目配せしあうと、席を立って店を出た。