それがどうした
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先週、T先生、某組織の大幹部、おれの3人で密談した。
T先生はこのブログにも何度か登場しているのでお馴染みかもしれないが、検察・警視庁のドンで安倍政権のフィクサーである。剣道と合気道の達人にして日本刀を愛し、いまや安倍内閣の閣僚から広域暴力団に至るまで従わない者はいない。
そしてもう一人の某組織とは政界にも影響力を持つ巨大団体で、現在のトップの横暴が大きな害を及ぼしている。大幹部氏は、組織内でクーデターを起こさせるべくT先生が招いたのである。(注! 暴力団ではない)
二人ともおれの親父の世代だ。
密談中、躊躇する大幹部氏が組織トップの権力の恐ろしさを述べ立てると、T先生が「それがどうしたというのです」と、一言で大幹部氏を絶句させた場面があった。
事実は小説よりも奇なり。この組織や実名が判らないようにいったん日記に書いたのだが、
しかし読み返してみるとやはりこれは公開するのはまずい。
この件は現在進行形の極秘案件なので、残念ながらこの日記は以下を消去してお蔵入りとすることにした。
しかし、ふと、
池波正太郎の鬼平犯科帳にも、長谷川平蔵が「それがどうした」と言って相手を絶句させる場面が出てくるのを思い出した。
長谷川平蔵も実在の人物だし、鬼平犯科帳の事件も実話に基づいている。おれにとっては学ぶことが多い。
池波のすごいところは実在の長谷川平蔵のダンディさを余すところなく引き出して描いているところだ。つまり実在の生きたダンディズムなのである。
話は長谷川平蔵の妻、久栄(ひさえ)に関わる。
久栄にむかしの男がいたのだ。
と言っても、久栄が生娘で初心だったころに隣家の不良息子に弄ばれて凌辱されたのである。平蔵はそれを承知で久栄を貰い受けた。
ところがそれから二十年経って、この男は喰いっぱぐれて盗賊に成り下がり、二十年前のことを持ち出して久栄を脅しにかかってきたのだ。
しかしそこは火付盗賊改め方のお頭のこと、男はたちまち長谷川平蔵の腹心の与力佐嶋忠介によってひっ捕らえられ、盗賊改めの留置所にぶち込まれた。
それで男は開き直った。
どうせ処刑されるならと最後の悪足掻きを企む。
すなわち久栄との過去の情事を平蔵に詳細に吹聴して夫婦ともに苦しめようというのだ。
さらに公儀火付盗賊改め方の長官夫人と盗賊との情事が世間に面白おかしく流布すれば長谷川平蔵は失脚するだろう。
与力の佐嶋は敏感に何事かを感じ取り、部下の同心たちが男を取り調べることを許さず、誰も近づけずに男を一人独房にぶち込んだ。
そして佐嶋の報告を受けた平蔵が、夜になって留置所にひとり現れる。
男にとってはチャンス到来だ。勝ち誇ったように久栄との過去の情事の詳細を暴露しはじめ、罵倒し始める。
が、長谷川平蔵はまったく動じることなく、
「それがどうした」
と言い放つのである。
けっきょく男が期待したことは何事も起こることなく、男は処刑された。