女将の脅迫状
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上村松園「序の舞」
1週間ぶりの掲載になってしまった。じつは今週は「分断の時代を生きる(13)史上最低の男」を掲載する予定だったのだが、書いてみるとどうもうまくない。ついでに安倍政権の閣僚も出てきてしまうのだ。
それでこれはまた消去、お蔵入りにして、分断の時代を生きる(13)は後日別の話を書くことにした。
それで息抜きのような話で恐縮だが・・・。
ひさしぶりに祇園の有名芸妓だった女将の料亭に行った。
なにしろその女将から脅迫状が来たからだ。
女将の手紙
「(前略)・・・もうずーっと来てくれないのはすっかり忘れられた証拠。」
たしかにここしばらく忙しかったうえに、たまの接待も他の店を使うことが多かった。しかし言い訳ではないが、それは仕事の流れなので仕方がないのだ。
「(中略)・・・電話にも出てくれないし・・・」
これも言い訳ではないが、ちょうどえらいじーさんたちとミーティングしていたのだ。
「(中略)・・・しかも返事すらくれないし・・・」
これは単純に面倒だった(笑)
「(中略)・・・そういうことなら私にも覚悟があります。」
おおっ! これじゃまるで脅迫状じゃないか(笑)
スケジュール表を見ると、ちょうど大先輩のN先生と二人で会食することになっていた。
ちょうどいい。会食の店を変更させてもらおう。
それで夕方N先生と合流して、そのまま車を拾って女将の店に向かった。
N先生は葛飾北斎や伊藤若冲なんかをいっぱい持っている大金持ち。
おれが若造のころからN先生に教えられたことは山のように多い。とくに「礼儀」についてはその神髄を垣間見せてもらった。
学校も教えないから多くの人が誤解しているが、礼というのはたんなる挨拶のことではない。
礼を尽くすということは、腰を低くして相手を最大限にもてなし、それによって敵だった者をも味方にし、ひいては敵を分断し、こちらの思う方向に強力に誘導してしまう強制力なのだ。
中国古典の春秋戦国時代、いつ裏切られ殺されるかわからない世界にあって諸侯がみな必死に礼を学び、礼を尽くしたのは、礼こそが最大の武器だったからだ。
日本の戦国時代も、徳川家康は諸大名に礼を尽くして自在に操ったが、石田三成は礼がわからずことごとく敵に回してしまった。
一代で巨富を築き上げたN先生の礼にはまったく隙がない。礼をもって大物政治家も大物財界人も国際ユダヤ商人でさえも自在に動かしてきたのである。
こうしてみると脅迫状?を送ってくる女将にも礼を欠いてはいけない。
さて、店に着いた。
車の中から電話を入れておいたので、女将と仲居たちが玄関で出迎えてくれた。
フミ「ママから脅迫状もらったから来たよ。」
女将「脅迫状じゃありまへん(笑) 恋文どす。」
フミ「えっ? 脅迫状じゃなかったの?(笑)」
N先生「はははは(笑)、フミヤスさん、モテていいね~。」
フミ「はは(笑)、N先生の弟子ですから。」
N先生「ん、僕にはそんな不埒な弟子はいないよ(笑)」
女将「フミヤスさん、ほら見なさい。N先生はウチの味方どす。」
どうも旗色が悪い(笑)
そうだ!
フミ「あ、ママ、N先生の襟首のところ見てごらん。」
そこには燦然と輝く5000万円のルビー。
このルビーのブローチは、以前、世界ランキングの大企業の元社長の紹介で、シカゴのマフィアのボス、ドイツ銀行の役員、N先生とおれの5人で会食したとき、
マフィア「N先生、いいブローチしてますね。おれも同じようなのを持ってるが、それほどいいものははじめて見た。」
N先生「それじゃ差し上げましょうか?」
マフィア「いや、遠慮しときましょう。後が怖いからね(笑)」
といういわくつきだ。
それで、
女将「まあ! こ、これは!・・・。」
さすが祇園でNO1だった女将、見る目がある。
その後、女将の機嫌が直ったのは言うまでもない(笑)