魅力的な渋い言葉を言え
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(古典映画『三つ数えろ』でフィリップ・マーロウ役のハンフリー・ボガード。 拾い物なので、ひょっとすると同じく古典映画『カサブランカ』のほうのボガードかもしれない。)
レイモンド・チャンドラー 原作の古典映画『三つ数えろ』を観た。
原作はレイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』(The Big Sleep、1939年)。この原作本は2012年に村上春樹が新訳している。
主役のフィリップ・マーロウは世界のハードボイルドを代表するキャラクターだが、
何といってもセリフが渋い。
マーロウは、検察庁あがりの私立探偵でプロ意識が高く、長身のタフガイで、美人の女性にも甘くはない。金にも左右されない。それに正直だ。どこか誠実で、信頼感があり、人を裏切らない。そのうえ自由である。
レイモンド・チャンドラーの魅力は、このマーロウのキャラクターに加え、レトリックの巧みさもあるが、しかし極めつけはマーロウの口から出る数々の名セリフであると思う。
その一つが、(財)日本総合戦略研究所の新サイトの冒頭でも書いたが、
『 タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない。』
( If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive. )
である。
(同じくフィリップ・マーロウ役のケーリー・グラント)
映画のストーリーでも名セリフ「三つ数えろ」がとどめを刺す。
人間は誰でも絶対に人に知られたくない弱みがあるものだ。
大物ギャングにその弱みを握られた姉妹。彼女たちを助けるため、マーロウは窮地に飛び込むが、しかし大物ギャングの圧倒的な悪知恵と権力に翻弄され、拉致され、殺されかける。
マーロウは大物ギャングの底知れない恐ろしさが身に染みたが、ギャングに対して裏をかくしか勝ち目がないと考える。
そしてマーロウは最後の話し合いの場で一気に逆襲に出る。
その最後の場面の一軒家の前で、ギャングは子分たちにマーロウが来たらそのまま家に入れておき、話が終わって「最初に家から出る」マーロウを玄関で撃ち殺せと指示した。
しかし先回りして一軒家に入っていたマーロウは、窓の隙間からその様子を見ていた。
家に入ってきたギャングにマーロウはいきなり拳銃を突き付け、
「助かりたければ三つ数えろ」と脅す。
不意を突かれたギャングはマーロウの隙をついて家から飛び出すが、指示通りに狙撃してきた子分たちに撃ち殺されてしまう。
マーロウは、三つ数えるあいだに、ギャングとともに姉妹の弱みも葬り去ったのである。
言葉には言霊が入る。
おれも、仲間に、女性に、敵にさえも、さらに魅力的な渋い言葉を発していきたいと思った。