フィクサーたちの秘密⑮ 白子の菊右衛門
いままで日曜日にブログを書いていましたが、最近は月曜日の夕方に書く時間を空けているフミヤスです。日曜日に書くと地方やイベントへの遠征が多少制約される。それで月曜日に仕事を早めに切り上げてブログに取り組むことにしたら意外とよいことがわかりました(^^)
閑話休題!
池波正太郎の鬼平犯科帳に「白子の菊右衛門」という大物の香具師(やし)の元締めが登場する。
香具師というのは江戸時代に全盛を極めた露店や見世物の商売人のことである。映画『男はつらいよ』の寅さんの職業はテキヤであるが、テキヤと昔の香具師はほぼ同業である。
香具師やテキヤの仕事場は門前市や盛り場だが、そこは麻薬を含むであろう怪しげな薬やインチキな品も出回り、いかさま師や無宿人のたまり場でもあった。
的屋(まとや)で、客の放った矢が的に当たると、太鼓を打ち鳴らして「あたぁ〜りぃ〜」と声を上げる女を矢取り女(やとりめ)というが、矢取り女は飛んでくる矢を掻い潜りながら的に刺さった矢や落ちている矢を拾い集める。客も面白がって矢取り女を追うように矢を放ったりしたのだろうが、そんな遊女たちを食いものにしていくのも香具師やテキヤが多かった。
それで「香具師の元締め」といえばテキヤの親分やヤクザの親分とほぼ同義である。
ちなみに現在も警察はテキヤを暴力団の起源の一つと定義しており、テキヤ系の暴力団も極東会や飯島会など多々ある。
鬼平犯科帳に登場する白子の菊右衛門は、大阪堺筋通り北久宝寺町に住む大物の香具師の元締めである。
鬼平犯科帳の『暗剣白梅香』(第1巻)では、白子の菊右衛門は、凄腕の浪人・金子半四郎を拾って汚れ仕事をさせていたところ、他の香具師の元締めから頼まれて、この金子半四郎を使って長谷川平蔵を暗殺しようとしたこともある。
また鬼平犯科帳の『麻布ねずみ坂』(第3巻)では、指圧の名人・中村宗仙が京都で知らずに白子の菊右衛門の妾・お八重と深い仲になってしまう。
白子の菊右衛門も、中村宗仙を殴る蹴るはしたものの、素人が知らずにしでかしたこととしてその場で殺すことはせず、宗仙にお八重を売ってやるから五百両を作れと命じたのだった。
ただし五百両の支払いには期限が定められ、それがすぎたら女も宗仙も殺すという条件付きである。
ここのところを、池波正太郎は次のように描いている。