春の装いはそよ風のように
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- 秘め事の美学から
銀座の並木通りをゆったり歩いていたら、
すぐ目の前を同じようにゆったり歩いていた女性がハンカチを落とした。
あっと思って女性に目を向けると、後姿がおしゃれな春の装いで、
春のそよ風のせいか上気していて、しかもフェロモンむんむんの足取りで、おれと同じ歩調で歩いている。
このシチュエーションは・・・
いや、こういうシチュエーションにたまに遭遇するが、正直なところ、おれはいままでろくな対応ができたことがない(笑)
というか、仕事とかパーティで知り合って自然に親しくなった女性は多いが、路上ナンパのようなシチュエーションにはそこはかとない抵抗感があって、それにそういう安っぽい出会いもしたくないのだ。
そういえば何年か前に馴染みのクラブのママからナンパの達人だというあんちゃんを紹介されたことがあった。
別れた奥さんと戦うのでおれに弁護士を紹介してほしいというまぬけな依頼だが、しかしナンパ師としては凄腕らしくオーラのような自信とツッパッた態度を見せていた。
しかしこのあんちゃんの自信とツッパリは偽物だ。ナンパのための女性向けパフォーマンスなのだろう。
おれの周りには日本最強の政財界のフィクサーや武闘派弁護士、武闘派ジャーナリスト、ユダヤ商人を手玉に取る資産家、ブラックジャーナリスト、右翼のボスなど、本物のツッパリが揃っているのだから、ごまかしは効かない。
第一に見せかけのツッパリなんて滑稽きわまりない。男の人生は格闘技と同じなのだ。
ナンパのあんちゃんはだんだんペコペコしてきて、お礼にナンパの極意を教えますとか言っていたが、こういうくだらない会話は時間の無駄なのでさっさと引き上げた。
それで銀座の並木通り。
おれがそのハンカチを落とした女性に「あの!」と声をかけると、彼女はパッと上気した満面の笑顔で振り向いてくれたのだが、
前日キックボクシングの筋トレのやりすぎでかがみ込むのが辛かったこともあって、 「ハンカチを落としましたよ」 とだけ言ってあげて、
彼女の視線がハンカチに向くと、おれはそのまま仲間たちの待つ店に向かった (笑)